認知症や知的障害などにより判断能力がない人の財産管理や生活の維持のため、家庭裁判所によって選任される「後見人」は、重要な役割を担います。後見人には、成年後見人と未成年後見人があり、この記事では主に成年後見人について解説します。

後見人とは

後見人は、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者の支援をする制度です。これには認知症、知的障害、外傷性脳機能障害などが含まれます。後見人による支援を受ける立場になった人は、「被後見人」と呼ばれます。

後見人の選任

後見人に選任されるために特別な資格は必要ありませんが、一定の条件を満たす必要があります。例えば、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、破産者、被後見人に対して訴訟をした者などは後見人になることができません。

後見人の職務

後見人は、被後見人の身上監護(生活、療養看護に関する事務)と財産管理の職務を行います。具体的には、介護サービス契約や施設入所契約の結び、費用の支払い、サービスの適切性の確認などが含まれます。また、後見人は被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について被後見人を代表します。

成年後見制度の利用者数

成年後見制度の利用者数は年々増加しており、令和4年12月末時点での統計では、合計245,087人の利用者数のうち、成年後見が178,316人、保佐が49,134人、補助が14,898人となっています。

保佐と補助

保佐は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者が対象で、保佐人には同意権、取消権、代理権が与えられます。補助は、事理弁識能力が不十分な者が対象で、補助人の同意が必要な行為や代理権を与える行為を定める審判とともに開始されます。

未成年後見

未成年後見は、未成年者(18歳未満の者)に親権者がいない場合、または親権者が管理権を持たない場合に開始されます。未成年後見人の選任は、子に財産があって管理者を置く必要がある場合、子を他人の養子にするために代諾権者が必要となる場合、相続財産について遺産分割をする必要がある場合などに限られます。

まとめ

後見人は、認知症や知的障害などにより判断能力を失った人の支援を行う重要な役割を担います。後見人には成年後見人と未成年後見人があり、それぞれの職務や選任条件が異なります。成年後見制度の利用者数は増加しており、保佐や補助といった制度も存在します。未成年後見は、未成年者の財産管理や法的代諾に関わる重要な制度です。後見人制度は、認知症などの精神的障害を持つ人々の生活を支えるために不可欠な存在となっています。

後見人の役割と選任プロセス